やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

パン屋さんの売れ残りパンはどうなるの???

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現在はコロナの影響でほとんどのパンがビニール袋に入れられていて、焼き立てパン屋さんの魅力が半減しているような気がしなくもないのですが、それが意外や意外、やはりこの状況では袋入りは必須のようで、むしろ喜ばれているようで何よりだと思います。

コロナ過で飲食店を中心として売り上げに大打撃を受けている業態がある中、意外にもお客様の足が遠のかないでいる焼き立てパン屋さん。

誠にありがたいことではありますが、大変な思いをされている業態を知るにつけ、どこか複雑な思いもありますね。

 

と、話はガラッと変わって、皆様はSDGsというものをご存知でしょうか?

 

「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標です。

このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」をSDGsと呼んでいるのです。

SDGsの前身である「MDGs」に代わって定められた

SDGsは、2000年に国連のサミットで採択された「MDGs(エムディージーズ/ミレニアム開発目標)」が2015年に達成期限を迎えたことを受けて、MDGsに代わる新たな世界の目標として定められました。

それまでのMDGsは、以下の8つのゴールを掲げていました。

ゴール1:極度の貧困と飢餓の撲滅
ゴール2:初等教育の完全普及の達成
ゴール3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上
ゴール4:乳幼児死亡率の削減
ゴール5:妊産婦の健康の改善
ゴール6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
ゴール7:環境の持続可能性確保
ゴール8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
(外務省ホームページより)

「極度の貧困と飢餓の撲滅」「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止」などが織り込まれていることからも分かるように、MDGsは先進国による途上国の支援を中心とする内容でした。

しかし、MDGsについては、途上国からこんな意見も出ていました。

乳幼児死亡率の削減など、発展途上国が抱える問題を挙げ、解決策を探った。だが、その内容は先進国が決めており、途上国からは反発もあった。進展には地域の偏りなどの「見落とし」があったとも指摘された。

(朝日新聞デジタル「SDGsって何?」より)

それを受け、2015年に新たに策定されたSDGsは、誰ひとり取り残さないことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき目標で構成されているのが特徴です。

 

 ということで、新たに決められた目標というのがこの17項目なのですが・・・

 

 

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 どうですか、ご存知でしたでしょうか?

世界各国がこのような人間的な、しかも平等にしてかつお互いを助け合うような内容を目標としているなんて、とても素晴らしいことだと思いますし、たとえほんの少しでも、たとえたった一項目だけだったとしても、それで救われる国、救われる人々がいるであろうと思うと、少しでも力になりたい・・・誰でもがそう思いますよね。

 

我が国の政治家もお偉いさん方も、きっとそのことの実現に向けて尽力してくれているのですよね・・・

 

けして私利私欲の道具になんかしていませんよね・・・

 

このSDGsは目標があまりにも壮大すぎて、決めたはいいけどいったい何をしたらいいの???と、特に個人としては思うはずです。

主としてはやはり政府や企業がメインとなって実践していくというものにはなると思うのですが、私個人としては、依然として進まないフードロス(食品の廃棄)に頭が行ってしまいます。

 

フードロスは永遠のテーマ・・・

 

パン屋になりたての私は非常に貧乏でしたので、お店で売れ残ったパンをいただけることだけが有難いことであったのは事実なのですが、実際に持って帰れるのは5~6個程度ですから、それ以外は捨ててしまう訳です。

この ”自分たちが一生懸命作ったパンを捨てる” と言うことにず~っとず~っと違和感を感じ続けて今に至っているのですが、もちろん様々な取り組みは行ってきたつもりです。

それは、

1.出来るだけ売り切るように作る。

2.割り引いて売り切る。

3.翌日に安く販売する。

4.再利用できる商品を考案する。

 

どの焼き立てパン屋さんでも、またスーパーなどの大手のパンであっても、出来るだけ廃棄することがなく売り切る努力と言うのは何かしら行っているはずです。

しかし、当然ながらゼロには程遠く、現実にはあまり変化がないのが実情なのではないでしょうか。

それはいったいなぜなのか、なぜ廃棄はなくならないのかを検証してみましょう。

上の4項目を具体的に紹介しておきます。

 

1.出来るだけ売り切るように作る。

 

焼き立てパン屋さんだけではありませんが、本日どれくらいのお客様が来るのか、そして時間帯や曜日別にデータを取って、出来るだけ残らないように作るということは、すでに企業を中心に行われてはいます。

しかしそれはあくまでデータですから、人の動きはその通りと言う訳にはいかないのです。

また、この売り切るということはお店側にとっては良いことでも、お客様からすれば「せっかく来たのにこれしかないの??」となってしまい、夕方以降の来客数を減らす原因にもなっているのです。

ということでよく見かけるのが、夕方以降に出来立て、焼き立てをあえて作るという動きなのですが、そうなりますと当然売れ残りは増えてしまうのでした・・・

システムで作る個数を制御できたとしても、お客様満足と言う観点を追うと、どうしてもそうなってしまうのが実情なのです。

 

2.割り引いて売り切る。

 

スーパーなどでよく見る光景ですよね、2割引きとか半額のシールが貼ってあるとテンションが上がるのは私だけではないでしょう。

この対策によって利益率は悪くなるものの、廃棄する商品は極端に減ることだけは事実です。

しかしです、これも企業ごとの考え方に違いはあるものの、割り引く時間帯ばかりに客数が偏ってしまう、割り引く時間帯前に買ったお客様に不公平感を持たれてしまうなどのことから、あまり積極的ではない企業もあります。

特に焼き立てパン屋さんにおいては、この手法はあまり行われてはいないと思います。

なぜなら、やはりその時間帯にばかり来る客が増えてしまったり、定価で買うお客様に良い印象を与えないからだと思います。

「焼き立てしか置いていないはずなのが焼き立てパン屋でしょ」というある意味非現実的イメージを持たれているお客様もいるのが実情なのです。

それでも廃棄だけは避けたいとお考えのパン屋さんでは、結論としては翌日に割り引いてでも売る切るというのが実情のようです。

 

3.翌日に安く販売する。

 

翌日に焼き立てパンと一緒に、袋入りのサービス品として販売して売り切るという対策を行っているお店もあります。

しかし、それだけは絶対に行わないというパン屋さんもあります。

一つには、焼き立てにこだわっているので、鮮度が落ちたものを売ることは出来ないという考え方のようですが、食べる側としてはすべてを当日には食べないことが多い為、「どのみち翌日にも食べるので意味がないのでは・・・、むしろ捨てることの方が悪」との意見もよく耳にします。

また別の考え方としては、24時間が経過したパンは食品衛生上雑菌の繁殖が心配されるため、売ることは禁じられている企業もあります。

しかし現実には、サンドイッチでもない限りはそれで衛生的に問題があるとか、お腹を壊すようなことはないと思うのですが、万が一でも許されないのが大手企業ですから、「廃棄よりも安全重視」としては理にかなっている訳ですね。

SDGs的には、それが「つくる責任」だとも言えるでしょう。

 

4.再利用できる商品を考案する。

 

これだけはどこの企業でも焼き立てパン屋さんでも意外と積極的に行われていると言えるでしょう。

なぜなら、その分廃棄は減る訳ですし、再利用と言う考え方はすでに深く浸透しているからでしょう。

特に食パンなどで言えば、フレンチトーストにしたり、ピザトーストにしたりと、様々なパンに生まれ変わることが出来ますよね。

フランスパンも色々なラスクに生まれ変わることも多いと思います。

初めから再利用も可能な商品構成を広げておくことで、出来るだけ廃棄を減らす方向にもっていくことは可能だと思うのですが、残念ながら相変わらず大量の食品ロスが出ていることは否定できません。

 

一体どれくらいのパンが捨てられているの?

 

こればかりは、お店によって、会社によって全く違うと思われます。

割引販売を含めて、絶対に捨てないと決めているお店もあります。

捨てないと決めているお店の中には、従業員に配ったり、友人やご近所に配ったりと、とにかく捨てることだけはしないという考え方がある一方、割引はするが無料にすると不公平が生まれるのでしないというお店もあります。

大手を含めたある程度の規模のパン屋さんでは、確実にその日のうちに廃棄するという考え方が一般的で、これもやはり安全第一の一環となります。

と言うことは、店舗の数からして廃棄中心のお店の方が圧倒的に多いことになりますから、やはり食品ロス対策はなかなか前に進まないのが実情だということになります。

詳しくないので触れないでいましたが、コンビニでもパンの廃棄は多いと思います。

とは言え、焼き立てパン屋さんの廃棄の金額は皆様の想像をはるかに超えていると言えますし、当然ながら売り上げ規模が大きくなればそれだけ廃棄率も増えることになりますから、毎日3万円分以上のパンを捨てているなんてお店も多いのが現実なのです。

 

じゃあどうしてもパンの廃棄をなくすことはできないの???

 

結論から言うとできないでしょう。

なぜできないのかと言いますと、それは各ご家庭に置き換えて考えていただくとわかると思います。

各家庭においても、「もったいないから残しておいて後で食べよう・・・」と言う意識はあるものの、家族の人数に比例して「残ったから捨ててしまう食べ物」「期限が切れてしまって残念ながら捨てる」というのはあるはずです。

また、「残ったので、もったいないから誰かにあげよう」と言う気持ちがあったとしても、現実には残り物をもらうという行為は、あげる方ももらう方もあまり気持ちの良いものではないでしょう。

なぜなら、他人に差し上げるものというのは、むしろ自分たちが日ごろ食べているものよりも少しグレードの高いものでないと失礼だという文化がそこにあるからです。

ですので、本来食べられないものではないにしろ、それを捨てずに他人に譲るという行為そのものに慣れていない習慣とか文化のせいでもあるわけです。

まだご近所どうしがおすそ分けしていた時代ならいざしらず、今時「これ、捨てるしかないので良かったらどうぞ」なんて言われたら、一体その後のお付き合いは成立するのかを想像するだけで心配になってしまいますよね。

まあ、私なら喜んで頂きますから、人によりけりでしょうけどね。

 

更に言うと、買う側の権利というのが強すぎる傾向があって、やたらと監視する、指摘する社会になってしまっているという側面も否めません。

そこでおのずと売る側も、とにかく安全に配慮して、少しでも疑わしいものは回収・廃棄するという空気になってしまうのではないでしょうか。

つまり、売り手の理屈や理想だけでは廃棄をなくすことはできないのです。

買う側の理解があって、国民全体がフードロスを減らしていくことに協力的、積極的になってくれないことには、本当の意味での「もったいないから捨てない」は実現できないのです。

 

フードロスを社会的に考えた時、「そもそもお店が多すぎるんじゃないの??」とか「お店が儲けたいがために作り過ぎることがいけないんじゃないの??」と言うような議論が必ず起きます。これは一見正しい意見のようにも見えるのですが、そうやってお店や企業を叩くことで世間の目がフードロスの原因を企業側だけの責任だと勘違いしてしまい、ただ単にお店潰しのようになることがもっとも怖いことなのです。そのようにして、いつもはお店があることが有難いことであることは十分分かっているにもかかわらず、メディアの片寄った報道を鵜呑みにして、あたかもお店が敵であり、業績拡大の為だけに作りまくって捨てまくっているかの如く捉えてしまうことが往々にしてあるのです。

 

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 フードロスも、SDGsも、誰かがやるもの・・・ではありません。

少なくとも今自分が出来ることをやる、行動を起こすということが大切なのではないでしょうか。

企業も個人も儲けなければ存続できないことは事実です。

しかしいつまでたってもそのことだけに目が行っていては、「もったいない」は絵に描いた餅でしかないのです。

もし本当にもったいないと感じるのであれば、ご家庭でもスーパーに行ってもパン屋さんに行っても、自分なりの具体的な行動をおこせるはずです。

どうすれば無駄な廃棄が減るのか、どうすれば本来廃棄されるはずの食品が誰かの役に立つのか、どうすればすべての人のお腹が平等に満たされるのか、SDGsというマクロの目標の中にある自分自身の小さな行動目標をもって、これからも食品製造に関わっていきたいと思います。