やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

パン生地ってどのくらい捏ねるのが良いの???

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久しぶりの更新となりました。

ここ数か月は本当に忙しく、パソコンの前に座る時間すら取れない状況が続き、すっかりご無沙汰となってしまいました。

ただし、お陰様で日ごろ試作できなかったパンまで色々と完成させることが出来、ある意味充実した数か月ではありました。

ただいかんせん体力の衰えはだけは隠せませんね。

今回は久しぶりにホームベーキングに思いを馳せて、皆様が日ごろ気になっているであろう、ある意味では基本中の基本であり、ある意味では何となく完了させている ”捏ねる” について考えていきたいと思います。

 

YouTubeなどでも多く見かけるようになったパン作りの動画を見ていますと、捏ねないパン作りとか、タッパーで簡単にとか、フライパン一つでなどなど、色々な作り方が紹介されていますね。

皆様もそんな中からお気に入りを探して色々と試されていることと思いますがいかがでしょう。

そして結果として今の作り方に満足できていますでしょうか?

それとも、真似しているはずなのにうまくいかないとお考えでしょうか?

ご家庭でのパン作りにも色々なやり方がある訳ですが、ネットが盛んになる以前でしたら、手で捏ねるかニーダーで捏ねるか、あるいはホームベーカリーにお任せしてしまうかの3択くらいしかなかったはずですが、今では実に多くの作り方が紹介されていますよね。

その考え方の中心となっているのが恐らくは 時短 ではないでしょうか?

パン作りって凝れば凝るほど時間がかかるものですよね。

現代人にとっての時間と言うのは、かなり限りがあるという認識であり、皆基本的には忙しい中でいかに効率よく物事をこなすかということが非常に重要視されてるのが実情でしょう。

ということで、やはりパン作りもどんどん時短でしかも簡単と言う方向へシフトしていくことはごく自然な流れだとも言えるでしょう。

パン作りを仕事として行うものからすれば、???と感じる部分は大いにある訳ですが、そこはやはり楽しさ重視のホームベーキングですから、食べる方が美味しいと思うのであればOKなのではないでしょうか。

とは言え、あまりに両極端な表現のものもありますし、いったいどこまでがギリギリのパン作りと言えるのか、本当に美味しければ何でもありなのかと若干の不安もよぎることでしょう。

そこで今回は様々な手法や考え方が混在するミキシング(捏ねる)工程について、少しでもスッキリしていただくための解説を行っていきたいと思います。

 

そもそも生地を捏ねる意味って何?

 

パン生地を捏ねる意味と言うのは、パン生地がふっくらとふくらんで、フワフワなパンになる為のパン作りのかなめであり、初めの一歩だということです。

小麦粉に水や砂糖や塩、そしてバターなどを練り込んで捏ねていくことによって、生地の中に無数の風船が作られ、イースト菌が発酵していくことによって生まれるガスがその風船を膨らませていきます。

生地内部の風船の数が多ければ多いほどキメ細かい内層になり、風船の数が少なければその逆となります。

また、風船の数が増えるのと同時に風船の滑らかさが膨らみ具合に影響し、滑らかな風船が多いほど口当たりがしっとりとしたパンになり、滑らかさに欠ける風船だと重い口当たりになります。

捏ねるという工程を短縮した場合、どうしても滑らかさに欠ける状態になり、たくさんの風船を作るという訳にはいかず、結果重い感じのパンになったりします。

他方しっかりと捏ねた場合には、数多くの滑らかな風船がたくさん膨らむことが出来、しっとりソフトなパンになるのです。

 

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あまり捏ねない膨らみの弱いパン

 

しっかりと捏ねられていないパンと言うのは、上の画像のように見た目にもふんわりとはしておらず、そのせいで表皮も硬そうに焼けてしまいます。

内層も詰まった状態であり、食べ口はどうしても堅い感じになってしまうでしょう。

 

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しっかり捏ねた膨らみのあるパン

 

他方しっかりと捏ねたパンと言うのは、上の画像のようにとてもふんわりと立体的で、しかも表皮が薄く、内層も気泡が多くふんわりとしています。

かなりの方がこちらのふんわりしたパンを好むと思いますし、そもそもふんわりとしたパンを作ろうと思って取り掛かったのであれば、しっかり捏ねることは必須であると言えるのです。

しかし世は時短ブームです。

捏ねずに電子レンジで強引に発効促進を行ったり、発酵室の温度を高くしたり、イースト菌を増やしたりと、これでもかと言うほど簡単に、しかも時短で出来ますよと教えるサイトもあります。

いかなる作り方をしても、とりあえずふんわりさせることは出来るのがパンの不思議なところでもあるのですが、ではふんわりしていれば美味しいのかと言えば、それは売られているようなパンに比べればそうはいかないでしょう。

もし美味しいと感じるのだとしたら、それは出来立てのアツアツに感動しているから、あるいは労をねぎらっての感想でしょう。

時短をすればするほど、美味しいと感じる時間も短くなっていくものです。

でなければ、どのパン屋さんもとっとと長時間製法なんかやめて、悠々とした出勤時間で仕事をしているはずです。

しかしパン屋さんは、味に妥協した瞬間からお客様が逃げていくことを知っています。

だからこそ、身を粉にして長時間労働にも耐えているのです。

 

良く捏ねるとあまり捏ねないの違いって・・・

 

こちらの画像をごらんください。

 

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膨らみの弱いコロネ

見るからに膨らみの弱いパンですね。

オーブンの中で膨らまないということは、オーブンの中でじっとしている時間が長いということになります。

ということは、同じ部分に長い時間火が当たるということになりますから、どうしても皮の厚い、そして色が濃い目の硬そうなパンになるのです。

どのような生地だとしても、オーブンの中で伸びないとこのような印象のパンになるのは同じです。

あまり捏ねない、あるいは捏ねが結果的に足りていない生地の場合、このようなパンになる可能性が高いと言えるでしょう。

いつもニーダーを使っている、あるいはホームベーカリーで捏ねているという方はむしろ真逆で捏ねすぎの人が多いと思いますが、手捏ねの場合はほぼ捏ねが足りていないと言えます。

手捏ねの場合はこれでもかと言うほど(時間にすれば20分以上)一生懸命捏ねて初めて丁度良い感じの生地になるものと思ってください。

 

機械を使って捏ねている人はこちらに注意してください。

 

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しっかりと丁度良い感じで捏ねられた生地というのは、こんな感じのパンになります。

 

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しっかり捏ねられたパン

いかがですか、ふんわり感が伝わってきますよね。

手捏ねの場合は、はっきり言ってここまで差が出てしまいますので、「そんなこと言ったってやはり時間がない」と言う場合は、違う製法で行うことをお勧めします。

 

 

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また、画像の見た目ではどう見てもしっかり捏ねたふんわりパンの方が美味しそうに見えますが、ハード系のパンやハース系直焼きパン、またはピタパンやフォカッチャというような、膨らみではなく風味を求めるようなパンの場合は、わざと捏ねないで小麦の風味を生かす作り方もあります。

 

興味のある方はこちらもチェック↓

 

パンチで生地を作る・・・とは - ベーカリーアドバイザーの部屋

 

では、コロネのような菓子パン生地と同様に、家庭で良く作られるであろうバターロールなどの生地の場合は、捏ね具合でどう変わるのかを見てみましょう。

 

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捏ねが足りていないバターロール生地

バターロールの生地でこれらの焼き込み調理パンを作る人は多いと思いますが、ご覧の通り上にたくさんの具材をトッピングする場合は、むしろあまり捏ねない、別の言い方をすると元気が良すぎない生地にしておいた方がこのように安定します。

しっかり捏ねた生地でこのようなパンを作った場合、パン生地が盛り上がり、具材が落ちてしまうこともあるでしょう。

成形にもよりますが、このような具材をたくさん乗せることが初めから目的のパンであった場合は、あまり一生懸命に捏ねない方がむしろ良いとも言えるのです。

 

 

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しっかり捏ねられたバターロール生地

こちらは十分に捏ねられた生地ですが、見事なバランスでソーセージが乗っていれば大丈夫なのですが、少しでもバランスを失うとたちまちソーセージは落ちてしまうでしょう。

もしこのままソーセージが落ちないようであれば、パンもソフトでふんわりとしていますので、理想的な調理パンだと思いますし、ソフト感も持続するパンだと言えるでしょう。

この場合先ほどの焼き込み調理パンはふんわりとはしていませんが、具材と相まってしっとりとした口当たりのパンになりますし、こちらのソーセージパンはフカフカしたボリューム感あるパンになるでしょう。

パン単体で考えた場合、あきらかにふんわりとボリュームのある方がいかにもパンらしい感じかもしれませんが、作りたいパンによっては必ずしもふんわりが必要な訳ではない場合もあります。

 

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シナモンロール

みんな大好きシナモンロールですが、このパンに使用する生地はブリオッシュなので、卵やバターがたくさん配合されています。

卵は膨らみに貢献しますし、バターもパンがオーブンで滑らかに膨らんでいくことに一役買っています。

このような副材料が多いパンの場合は、むしろあまり捏ねすぎてしまうと大爆発してしまって、画像のようにはなりません。

成形がただの丸の場合は大丈夫かもしれませんが、このように巻き込んでいる成形だとドリル状に盛り上がってしまいますので、このパンも成形によっては捏ね方を調整する必要があるわけです。

デニッシュなどもそうですよね。

あまり元気な生地だと具材が皆落ちてしまって台無しになってしまいます。

 

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どなたでも経験があると思いますが、これらのオーブン内で異常に伸びるパンの場合は焼き上がるまでヒヤヒヤものですよね。

 

と言うことで結論・・・

 

基本的には良く捏ねればフワフワパンになり、あまり捏ねなければ重い感じのパンになる。

 

菓子パンやバターロールなどのしっとりフワフワを求めるのであれば、しっかり捏ねるのが基本。

 

ハード系などのリーンなパンの場合は、ボリュームが出過ぎると風味が無くなってしまうので、あまり捏ねないのが基本。

 

どこを目指すのかによって決めることが大切ですが、同じ生地であってもどのような成形にするのか、どのような具材を使うのかによっても捏ね方は実は違ってくる。

 

例えば具材を包みたい場合は生地はしっかりと捏ねた方が良く、具材をトッピングしたい場合はあまり捏ねない方が安定する。

 

デニッシュやクロワッサンのようにバターを折り込むパンの場合はあまり捏ねないのが基本だが、ソフトな食べ口にしたいのなら良く捏ねて、ザックリとした歯触りが欲しいならあまり捏ねない方がよい。

 

ということで結局こうでなければいけないということなのではなく、捏ねるという工程が膨らみや食べ口に密接に関わってくるのだということを理解しておくことが大切なのではないでしょうか。