やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

美しいフランスパンのクープを実現するには・・・

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鮮やかなクープのバゲット

 

質問の総合No1・・・それはやはりクープに関してになります。

パン屋さんもそうですし、ホームベーキングの方の質問もそうです。

やはり私もそうですが、自分の作ったものに美しさを求めてしまうものなのですね~

 

前回は、特にホームベーキングの方は「クープは気にするべきではない」的なことを書きました。

しかし、昔も今も質問の多くは

 

クープがきれいに開かないのはなぜ?

クープのバランスがバラバラになるのはどうしてですか?

カミソリの角度は何度にするべきなのでしょうか?

クープの深さは何ミリが理想なのですか?

 

と言うような内容なのでした。

多くいただく質問同様、画像も頂きますので、それを見てその都度判断をすることになるわけですが、そもそも多くの方々は一番大切なことを見逃していることが多いと感じます。

それは何かと言いますと、

 

クープがきれいに割れるかどうかは、クープをする前にすでに決まっている。

 

という点なのです。

つまり、クープをきれいに出したいのであれば、生地の状態と成形をそれなりに理想のクープに合わせて行っておく必要があると言うことなのです。

 

クープがきれいに割れる条件とは・・・

 

皆様の多くは、クープを入れる際のナイフの角度とか深さとかバランスとか、あるいはナイフの質であるとか、オーブンの性能がどうとかに注視していると思います。

しかし結論から言いますと、クープがきちんと割れるに決まっている生地の状態にさえなっていれば、誰が入れても、どのように入れても、クープは開くのです。

逆に言いますと、クープが開きません・・・ということは、クープが開かないような生地の状態になっていると言うことになる訳です。

 

ちょっとこちらの画像を見て下さい。

 

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発酵終了の生地

 

今まさに発酵を終えてクープを入れる前の生地の状態になります。

生地は350gのバタールと手前が100gのフィセルです。

プリッとした感じになっているのがお判りでしょうか?

 

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クープを入れたバタール

 

クープを入れて30秒くらいのところですが、自然と開いてきていることが解ると思います。

深くナイフが入っているようにも見えますが、そうではなくて開いてきているのです。

このような生地の状態になっていれば、誰がクープを入れても、例え何本入れてもきれいに割れてくれます。

バランスが悪ければそのまま不揃いではありますが、割れはします。

深すぎる、あるいは浅すぎる場合も、当然割れ方が違いはしますが割れます。

気になるナイフの角度に関しても、どのような角度で入れようと、あるいは1本づつバラバラな角度で入れようとも、割れます。

もっと言うと、割れないようにすることはむしろ不可能で、ナイフを入れてしまえば、形こそさまざまかもしれませんが、割れないと言うことはないのです。

 

そんな馬鹿な!?  だって現実にいつも割れなくて悩んでいるんだから、割れないようにするのは不可能って・・・一体どういうことなの・・・??

 

そうなりますよね・・・

 

もう少し見ていただきましょう。

 

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クープを入れたフィセル

 

こちらが1本クープですが、やはり自然と開いてきていますよね。

 

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具入りのフランスパン

こちらは具材が入ったパンですが、やはりやや開いてきていることが解ります。

 

 

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焼き上がり

 

このように焼き上がる訳ですが、「そりゃそうだよね」と言うくらい当たり前のように割れていますよね。

 

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クープを入れたカンパーニュ

こちらはパンドカンパーニュ400gですが、これもクープをしてしばらくすると勝手に開いてきています。

 

そして焼き上がるとこんな感じです。

 

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パンドカンパーニュ

ま、そりゃ開くでしょうね・・・みたいな感じ通りに開きました。

 

さて皆さまもうお気づきでしょうか・・・

ご自分がクープを入れた数秒後の姿がこの画像のようになっていますでしょうか。

もしかしたら、クープを入れた部分が閉じてしまったり、しぼんでしまったりしてはいませんでしたか。

クープがきれいに割れるかどうかと言う条件は、パン生地が伸びたい、膨らみたい、大きくなりたいと言うような状態であるかどうかなのです。

そういう状態でない、つまり元気がない、ハリがない、膨らむ気がしないような状態の生地であったとしたら、それはもう誰がクープしても割れはしないのです。

画像のように、ナイフを入れたらすぐにでも開いてきてしまうほどハリがある、コシがある、そして膨らもうとする力があることがまずは大前提なのです。

 

では、超柔らかい生地でもクープが開くのはなぜ?

 

ハリがある、コシがあるという条件にするためには、前回も書きましたがある程度硬めの生地にしておくことがコツではあります。

しかし、どんなに柔らかい生地、水が多い生地であっても、ハリのある成形、コシのある成形を行うことが出来れば当然クープは開くわけです。

また、オーブンの設定や蒸気の量を調整することでもある程度はコントロールできます。

しかし、成形とかオーブンの性能とかスチームの量や質というのは、知識とテクニックが必要であり、残念ながら誰でもができる訳ではありません。

ですから、まずはご自分がどのレベルなのかを見極めた状態で臨まない限り、いかなる生地でもクープをきれいに・・・と言う訳にはいかないのです。

徐々にクープをきれいに開くコツがつかめてきたら、少しづつ違う製法とか、違う酵母とか、水を増やしてみるとか、小麦粉を変えてみるなどに挑戦してほしいのです。 コツがつかめてきてからですよ。

 

悩んだらここをチェックしてみよう・・・

 

これは特にパン屋さんから多くいただく質問なのですが、

 

★クープがキレイに割れなくなってもう3年がたちますが、いまだに解決できていません・・・

★以前はそこそこ奇麗なクープが出せていたつもりなのですが、オーブンを買い替えたところ全く開かなくなってしまいました・・・

★天然酵母に変えてからと言うもの、まったくバゲットのクープが開かなくなりました・・・

 

などの質問を頂きました。

3年たっても解決できないほど難しい問題なのか~と共感する人もいるはずですし、もっと長く悩み続けていると言う人も実際にいるのです。

しかし、現地に伺って一緒にパンを焼くと、その場で見事にクープは開きます。

しかもみな一発です。 成功率100%なのです。

皆さん「まさかー」とか「ありえない!!」などと驚かれますが、開かない方が本来はおかしいのです。

パンと言うのは、オーブンの中に入ると必ず膨らみますよね。

膨らんでいこうとする生地に切り目が入っていたら、そこからまずは開こうとするのが原理なのであり、そのことさえ理解してしまえば悩むことはなくなるのです。

そうは言ってもピンとこないと思いますので、チェック項目を上げておきましょう。

 

チェック1

クープする生地の表面がベタベタしていませんか?

濡れていたり光っていたりすると、そこにナイフを入れるとしぼんでしまいます。

乾燥しない程度に乾かしてからナイフを入れましょう。また、生地の表面を指で押してみて、戻ってくるようなハリがない場合は、ナイフを入れても開いてはくれません。生地を固めにするか、もっとハリのある成形が出来るように頑張りましょう。

 

 

チェック2

生地の表面にしわができていませんか?

クープの前に生地を移動したりした場合、そのわずかなショックで生地がしぼんでしまうことがあります。発酵終了の生地には、絶対にダメージを与えてはいけませんし、しわが寄ってしまう生地というのは、そもそもハリがないことになります。ベンチタイムや成形の際に生地が冷えてしまうとコシが無くなってしまいます。ご家庭では特に量が少ないためにベンチタイムで冷える傾向がありますので注意が必要です。

 

 

チェック3

イーストを減らしたりしていませんか?

オーブンの中で十分に膨らむためには、イースト菌の働きが最も重要になります。いたずらにイーストを減らしたレシピ、長時間発酵や長時間冷蔵発酵、天然酵母などの場合は、どうしてもオーブンでの瞬発力がとぼしく、クープが開く前に表皮が焼けてしまうのです。いかなるレシピでもオーブンの中で膨らまない訳ではありませんが、このような瞬発力のない生地の場合は技術とコツが必要となることだけは覚悟しておきましょう。

 

 

チェック4

生地がカサカサに乾燥していませんか?

通常通りに発酵を行った場合、乾くと言うことはあり得ません。つまり、その生地は過発酵であることが想像でき、過発酵の生地は表皮が皮ばってしまい、開くことが難しくなります。かと言って霧吹きなどで濡らす人がいますが、皮ばった生地を濡らすと今度は尚更表皮が開きにくい状態になるのです。この場合はナイフを深めに入れることと、スチームを少なくすることでやや改善できます。

 

 

チェック5

ライ麦や小麦全粒粉、そして胚芽やごまなどを配合していませんか?

そもそもこれらの材料にはグルテンが少ない、もしくはないこと、そして粒がグルテンを阻害しています。伸びることを邪魔する要因があるということを理解したうえで、イーストを増やすとか強めの小麦粉を使うとか、生地を硬めにしっかり捏ねるなどの工夫を行わないと、どうしてもクープが開けずに焼けてしまいます。クルミやレーズンなどももちろんそうですが、混ぜ物で膨らみを邪魔されるのだと言うことを念頭に入れて、生地の取り扱いとハリのある成形を試みましょう。

 

と、出来るだけ解りやすく表現したつもりですが、伝わっていますでしょうか・・・

50%くらいでしょうかね・・・

では次回、もう少し突っ込んで説明できるように頭を整理しておきたいと思います。