やっぱり手作りパンが好き

ご家庭でのパン作りをとことん応援します。長年のベーカリー経験とパン教室経験にもとづく、超解りやすい解説を心がけています。

天然酵母の種継ぎとは・・・

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こんな質問をいただきました。

 

私はホシノ天然酵母を製パン問屋さんから購入して使っていますが、以前自家製にチャレンジした時にやはり酸っぱくなってしまい、怖くてそれ以来自家製はやめているのですが、意外と簡単なように本には書かれていたりしますよね。

それと、種継ぎが必要な天然酵母があるようですが、それはなぜ必要なのですか? ホシノ天然酵母はなぜ種継ぎがいらないのですか?

 

 

質問をくださるホームベーキングの方々の中にも、自家製酵母を使いこなしていらっしゃる方々が以外と沢山いて驚いています。

まあ家庭レベルなら、ある程度の知識があれば比較的簡単に出来るものだとも言えますが、沢山作るとなると、少し勝手が違ってくるようですね。

天然酵母は、果実の皮に比較的安定した酵母がたくさん存在していますので、ブドウ・レーズン・もも・りんごなどは意外と簡単に、しかも安定的に発酵してくるものです。

これらのいわゆるフルーティーな酵母は、それを使っただけでフルーツの風味もプラスされますので、例えばイースト菌を沢山入れたらとても食べられた物ではないパンになるのに対して、フルーツ酵母はいくら入れてもよりフルーティーになりますから、水代わりに沢山入れれば発酵も安定してきますし、美味しくもなる訳です。

果実からとった酵母と言うのは、さらに酸っぱくなりにくいのも特徴ですね。

しかし、小麦やライ麦などから菌を培養しようとすると、どうしても空気中の浮遊菌が多くなり、結果酢酸菌が早々と活動を始める為に、酸っぱいパンになりやすいのです。

ですから、粉から菌を培養するのは比較的難しいと言えると思います。

なぜなら、パンを発酵させる為の菌が育ちにくいのに対して、酢酸菌と言う酸っぱい菌はすぐに育つからです。

この酸っぱい菌というのは、何ものなのでしょうか????

物が腐ると言う事なのでしょうか?

この発酵食品が酸っぱくなるメカニズムは、解り易くいえばキムチと同じなのです。

キムチは発酵食品の代表格ですが、日にちが経つと酸っぱくなっていく事は誰でも知っていますよね。

ある意味熟成の旨味が増えていくのに比例して、どうしても酸っぱさも増してしまうのです。

ですが、キムチの注意書きにも書かれていますが、日にちが経って酸っぱくなったキムチは、チャーハンなどにすると美味しく召し上がれますと書いてあります。

そうなのです。 キムチは酸っぱくなったらチャーハンとしてご飯と一緒に炒めると、他の材料と合わさる事で酸っぱさを感じなくなり、熟成の旨味だけが残るのです。

それが証拠に、漬けたばかりのキムチでチャーハンを作ってみて下さい。

単に辛い白菜入りご飯になり、あまり美味しくありません。

つまり、酵母づくりにはパンを膨らませる力のある菌を育てるという目的と、熟成による旨味や風味を得たいという両方の目的がある訳です。

そして、色々な素材から天然の酵母を育てようとするわけですが、その素材によって育て方、つまり種継ぎの仕方を変えないといけないということなのです。

 

ではここから、天然酵母の様々な種継ぎの必要性について説明していきましょう。

 

種継ぎはなぜ必要なのか?

 

種継ぎをする目的は、新しい浮遊菌を取り入れる為であり、新しい粉を足す事で熟成のし過ぎを抑えて酸っぱくならないようにする為なのです。

パンを膨らます為の強い菌を育てるのには、非常に長い時間がかかります。

その間に熟成し過ぎて酸っぱい菌が育たないように、種継ぎをして新しい粉をプラスする事で、酢酸菌の増殖を抑えているのです。

その際、新しい粉や水、そして熟成の進んでいった酵母の中には、パンを膨らませるための発酵力の強い菌(いわゆるイースト菌)が徐々に増えていきます。

適度な時間と温度でこの熟成管理を継続していくことで、熟成の進み具合をコントロールしながらイースト菌をふやしていき、イースト菌が徐々に増えていくことによって雑菌類が減っていくのです。

ですので、ここで言う小麦種とか果実種というものは、熟成が進みすぎて酢酸菌やその他の雑菌などが増えていかないように、常に新しい空気・粉・水などでリフレッシュさせる必要があるわけですね。

 

種継ぎがいらない天然酵母とは・・・

 

では、ホシノ天然酵母はなぜ種継ぎがいらないのでしょう?

それは、原料である米麹には酢酸菌が発生しにくいからなのです。

しかしもちろんのこと、数週間種を放置しておくと、きちんと酸っぱくなりますよ。

ホシノ天然酵母、またその他メーカーで売られている天然酵母というのは、きちんと培養管理されてほぼ完成された商品なのです。

その商品を規定通り、1~2日再び発酵させるだけでいわばよみがえり、すぐに使うことができるのです。

そしてその特徴としては、そこで完成した酵母液はいわゆる使い切りタイプなのです。

なぜ使いきりなのかと言いますと、それを各自がまた培養してしまったりすると、違った風味のものになってしまいますし、そこまでは責任がもてませんよね。

ですから、勝手にアレンジはできないようになっているのです。

というか、必要ないようにできていると言った方が正しいかもしれませんね。

また、逆に熟成を一切行わずに、作ってすぐの酵母を使用すると、まれに酸っぱいパンが完成します。

これは、イーストが育っていない環境では雑菌が繁殖しやすいことの証明でもある訳です。

つまり、いかなる状況でも酸っぱくなる可能性はあると言う事です。

 

先日頂いた、とある天然酵母の専門店のパンを食べようとした時でした。

袋を開けるや否や顔をそむけたくなるほどの酸っぱい香りが部屋中に充満しました。

申し訳ありませんが、とても口に入れる事は出来ませんでした。

しかし、翌日そのパンをスタッフに食べさせたところ、約一名は何処が酸っぱいんですか??? などといっておりましたから、人の味覚の違いには本当に驚かされましたね (ー_ー)!!

げんにそのパン屋さんは普通に営業している訳ですから・・・

そういえば、キムチも鼻が曲がる位酸っぱい方が好きだと言う人もいますしね。

ただし、一部のマニアはいいとして、一般的には酸っぱいとか苦いと言うのは、やや腐敗に近い菌も多く発生しているのだと言う事を認識しておかなければなりませんね。

いわゆる腐敗臭があるからこそ、人はそれを食べずに済む訳で、腐敗臭と見分けがつきずらい臭いは要注意と言う事になると思います。

失敗するのはたいていの場合小麦種です。

ですので、小麦種というのは風味付けとして使用し、パンを膨らませる方が果実種にお願いするというのが一般的な使い方だとも言えるでしょう。

 

それから、種継ぎについてもう少し・・・

ホシノ天然酵母を種継ぎしても、一向に構いませんよ。

パン屋さんに行って、買ったパンがホシノ天然酵母である事は、食べればすぐに解ります。

それくらい個性的な香りを持っているのです。

しかし、個性が強すぎて皆同じ風味のパンになり易い傾向があるのです。

美味しいのですから別に構わないと言う人はそれでいいのですが、すべてをホシノ天然酵母で作っている場合、少しは違う風味も出したいと思うものです。

そんな時は種継ぎをすれば、本来の風味とは違ったものに変わっていきます。

どの位の日数種継ぎをしたかによって、また種継ぎの分量などによっても、大きく風味の違ったパンが完成するのです。

 

今日のポイント

これは、イースト菌で作った発酵種を数日間種継ぎしてパンを作ったとしたら、イーストの香りはまったくなくなって、別の香りが生まれているのと同じ事です。

レーズンなどの果実もそうです。

発泡したレーズンを使ってすぐに作ったパンは、まるでブドウサイダーパンのような味になりますが、レーズン液を種継ぎしていくと、もう数日のうちにはレーズンの風味はなくなっています。

 

また、種継ぎと言う定義も曖昧だからだと思いますが、レーズンなどの果実種であれ、ホシノ天然酵母のようなほぼ完成品であれ、酵母が活性化するまでは数日かけていわゆる培養するわけですから、これが種継ぎにあたりますよね。

市販のイースト菌と同じように発酵力を目的とした使い方をする場合と、香りやコクなどを得たいという目的の場合では、どの素材から得た酵母をつかうべきか、そしてどのように種継ぎをするべきなのか、選択していかなければいけない訳ですね。

そう考えると、少しばかり難しい世界に足を踏み入れることになるかもしれませんけど・・・